東北大学生態適応グローバルCOE人工湿地実験施設とは?

◆自然湿地の原理をもとに水質浄化機能を人工的に強化したシステム

 人工湿地とは、自然界の湿地における浄化メカニズムを原理として、制限条件を人工的にコントロールした半自然条件下で水質浄化機能を高めたシステムを指します。

【図1】人工湿地実験施設の全体像

 本実験施設は、汚水の流入をコントロールする複数の集水枡と5つに分かれた総有効面積111㎡の人工湿地で構成されており、汚水は5つの人工湿地で順次浄化されていきます。傾斜を利用して棚田状に湿地を配置することで、無エネルギーで汚水を湿地に流入させることができます。

【図2】人工湿地の内部構造

 図に示されるように、各人工湿地の内部は、ヨシを植栽した15−70cm厚の砂ろ過層で構成されています。砂ろ過層での物理的なろ過・吸着とろ過層内に捕捉された汚濁成分の生物学的分解の2段階の作用が繰り返されて汚水が浄化されます。なお、ヨシによる吸収効果は人工湿地の浄化性能のわずか10%程度にすぎないため、植物の刈り取りは不要です(メンテナンスフリー)。

◆ 無エネルギーでの好気的処理が可能

 自然界の湿地や河川の水質浄化機能においては、酸素が好気的分解を制限しています。現在主流の下水処理場で活用される「活性汚泥法」は、汚水タンクに強制エアレーション(曝気)を行うことで、酸素供給が制限にならないようにした高性能な水質浄化システムです。この曝気が、運転エネルギーの約80%を占めています。

 一方、本人工湿地では、酸素の制限を解除するために、汚水の流入時以外はろ過槽内に水位が存在しない状態にします(干潮時の干潟のように、大気に直接さらされるため、ろ過槽内は好気状態となります。※1)

 ※1 干潟の優れた水質浄化機能は干満に依存しています。干潮時の干潟では大気に直接さらされることにより、酸素制限が解除されます。

【写真】「湿地」と言いながら、本人工湿地には、汚水の流入時以外は水位が存在しない。分配パイプから供給された汚水(写真右)は、ろ過された後、速やかにろ過層下部のドレインパイプから排水される。

 そして、汚水の間欠的な流入により、汚水の浸透に伴い空気がろ過槽内に引き込まれることで、自然に曝気効果を得られるようになります。これによりエネルギーを要する曝気操作を行わずに、好気的な分解を促進することができます。


【写真】自動サイホンによる汚水の間欠的流入のようす。水位が上昇し、フロート管に水が浸入するとフロートが沈む。フロート管が沈むことで流出管の位置が下がるため集水枡にたまった水が一気に放出される。

微量化学物質の高度処理に焦点を合わせた世界初の人工湿地

 さらに本実験施設では、内分泌撹乱化学物質等の微量化学物質の分解を促進するため、根の高密度化を促す構造を取り入れた人工湿地を最後段に設置しています。

 これは世界ではじめての試みであり、無エネルギーで汚水中の懸濁物質、有機物、栄養塩、病原性微生物を高度に除去できるだけでなく、一般的な下水処理施設において処理が困難である微量化学物質の除去機能も期待することができるものです。