第9回生態適応セミナー

(第6回細胞認識応答学セミナー)

 

高柳 広 博士

東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科

     
 
破骨細胞の細胞内シグナル伝達と骨免疫学
Signal transduction in osteoclasts and osteoimmunology
 
     
 

日時 1月29日 17:00-18:30

 
  場所 生物地学共通講義室 (青葉山キャンパス理学部生物棟)  

破骨細胞による骨吸収の活性化は、関節リウマチや骨粗鬆症における病的骨吸収の 原因であるため、その分化・活性化のメカニズムを明らかにすることは、骨疾患の新 たな治療法を確立するために非常に重要な意義をもつ。われわれは、免疫系による骨 代謝制御に注目し、「骨免疫学」の観点から破骨細胞の制御機構を解析してきた(文 献1)。 関節リウマチでは、炎症組織に浸潤したヘルパーT細胞が破骨細胞を誘導すること で骨破壊をきたす。滑膜のTh17細胞がIL-17を介して破骨細胞分化因子 RANKL(receptor activator of NF-kB ligand)を誘導すると同時に、滑膜細胞から炎症 性サイトカインを誘導することで、相乗的に破骨細胞分化を促進する。最近、我々は 破骨細胞の基質分解酵素カテプシンK阻害剤を用いた検討によって、カテプシンKの免 疫制御作用を発見し、この阻害剤には骨と免疫の両方に効果をもつことを明らかにし た。カテプシンK阻害剤は、破骨細胞に直接作用するだけでなく、Th17細胞分化を促進 する樹状細胞からのサイトカイン産生を抑制し、自己免疫炎症を抑制する作用も有し ていた(文献2)。  

破骨細胞の分化には、RANKLによって誘導される転写因子NFATc1が必要である。 NFATc1の誘導には、RANKL以外に免疫グロブリン様受容体からのITAMを介した共刺激シ グナルが重要な役割を果たしている。最近、このRANKとITAMシグナルは、チロシンキ ナーゼTec/Btkを介して相互作用して破骨細胞分化シグナルを伝えることが明らかにな った(文献3)。このように、骨免疫学的な視点から破骨細胞特異的なシグナル伝達 機構をさらに解明することが、今後の新しい治療戦略に道を開くと考えられる。

References

1. Nat Rev Immunol 7, 292-304(2007)

2. Science 319, 624-627 (2008)

3. Cell 132, 794-806 (2008)