第14回生態適応セミナー

 

 

河村正二 博士

東京大学・大学院新領域創成科学研究科 先端生命科学専攻・准教授

 
     
 
視覚光センサーと色覚の進化多様性:魚類と霊長類から
 
     
 

日時 4月27日 17:00-

 
  場所 理学部・生物地学共通講義室  

異なる波長の光を違うと感じる感覚(色覚)は動物により大きく異なっている。 同じ虹を見ても4色型色覚の鳥なら3色型色覚のヒトよりずっと多くの色を見る ことができるだろう。近年、様々な動物において色覚を担う光センサー(錐体視 物質)の解明が進み、動物によりその数や種類や発現パターンが異なることがわ かってきた。明度が絶え間なく変動する浅瀬の水環境と森林環境は色覚進化の揺 籃地であり、特に魚類と霊長類が顕著な色覚多様性を示すことと符合する。例え ば、魚類のゼブラフィッシュは8種類もの錐体視物質をもち、網膜の領域により 発現する視物質構成を違えることで、視線の方向によって色覚を違えており、我 々ヒトよりはるかに微妙な色調を認識できると考えられる。これを実現するため の視物質オプシン遺伝子の制御メカニズムもわかってきた。また、中南米に生息 する新世界ザルには1つの種内に6種類の異なる色覚型が存在するものが知られ ており、生息環境と色覚との密接な関連もわかってきている。このように、色覚 について近年多くの大変興味深い研究成果が蓄積してきている。ヒトの色覚は霊 長類の森林適応の歴史と密接に関係しているはずであり、高度で多様な魚類色覚 は脊椎動物の色覚進化を考えるうえで重要なモデルとなる。我々は魚類と霊長類 を主な研究対象として、環境に適応した多様な色覚の進化の解明に取り組んでい る。本セミナーでは魚類と霊長類の視物質多様性とその生態学的意味についての 最近の知見を紹介する。