第18回生態適応セミナー

 

 

黒川紘子博士

東北大学・生態適応GCOE助教

 
     
 
生態系の地上部・地下部特性に外来植物はどう影響するか?
 
     
 

日時 6月4日 16:30-17:30

 
  場所 東北大学青葉山キャンパス・理学総合棟 205号室  

近年、外来生物の侵入による生態系の改変が世界中で大きな問題となっており、 侵入種となり得る外来生物の特性や分布域拡大メカニズムの解明、および侵入種 が生態系に与える影響の予測が早急に求められている。例えば、侵略的外来植物 はその旺盛な成長や繁殖力により在来植物を駆逐するのみならず、植物を利用す る地上部・地下部食物網にも影響を及ぼし得る。特に、植物—土壌フィードバッ クにおける影響は、炭素・栄養塩循環といった生態系レベルの影響や、侵入植物 の分布域拡大につながる可能性もある。このような影響は、被食・分解に関わる 植物の機能的性質が、外来植物と在来植物で大きく異なるときに顕著になると考 えられる。そこで、外来植物の影響予測・リスク評価には、侵入先の植物群集や 食物網において外来植物がどのような特性を持っているか、といった群集や食物 網を考慮したアプローチが必要である。 今回は、ニュージーランドの氾濫原で行った二つの研究を主に紹介したい。こ の氾濫原では洪水による撹乱後、外来種を多く含む植物群集が成立している。一 つ目の研究では、葉の機能的性質や被食率・分解速度において「外来植物」は 「在来植物」とどう異なるのかを41種の低木を用いて比較した。その結果、被食 率や分解速度とそれに関わる葉の性質は外来低木と在来低木で特に異ならないと いうことが明らかとなった。二つ目の研究では、この氾濫原の植物群集構造を除 去実験で操作し、どんな植物が地上部、地下部特性に強い影響を与えるのかを調 査した。一般には、群集内で占めるバイオマスの大きな種が生態特性に強い影響 を持つ(Mass ratio hypothesis)と考えられているが、土壌微生物群集や線虫 群集特性に対してはその予測に反し、バイオマスの小さな外来草本類の方がバイ オマスの大きな在来・外来低木より強い影響を与えることが明らかとなった。こ れは、外来草本類の機能的性質が在来・外来低木と大きく異なるためと考えられ る。これらの研究は、単に「外来種である」ことや「バイオマスの大きさ」だけ では、生態系における外来植物の影響の強さや方向性を予測できないことを示唆 している。さまざまな生態系における外来植物の影響を予測するには、特に外来 植物の性質と侵入先の生態系の性質に注目することの重要性を議論したい。