第20回生態適応セミナー

 

 

黒川 顕 教授

東京工業大学・大学院生命理工学研究科

 
     
 
メタゲノムインフォマティクス
 
     
 

日時 7月15日 16:00〜

 
  場所 生命科学研究科本館(片平)3階会議室  

細菌はヒトの口腔内,腸内,皮膚などに存在するだけでなく,河川,海洋, 土壌など地球環境の至るところに存在することから,生命を含めた地球環境の 根幹を形成していると言っても過言ではない.環境中の細菌は極めて多様であ り,これら細菌のもつ多様かつ膨大な遺伝子群で満たされている環境は,巨大 な遺伝子プールととらえることができよう.この環境中の遺伝子プールを解析 する極めて有効な手段のひとつが,細菌叢を培養に依存することなくまるごと ゲノム解析する「メタゲノム解析」である.  また,シークエンス速度の向上,コストの低下など,新たなシークエンス技 術の開発は日進月歩で,454やSolexa,SOLiDなどに代表される第3世代の高速 シークエンサーが登場するに至り,いよいよメタゲノム解析により環境中の遺 伝子プールを悉皆的に解析可能な時代となった.現在世界で実施されているメ タゲノムプロジェクトは,環境中の細菌叢に対するメタゲノム解析が主たるプ ロジェクトとなっており,すでに鉱山排水,海水,土壌,動物腸内,活性汚 泥,大気など様々な環境においてメタゲノム解析が行われ,環境中の細菌群集 の理解の基盤となる,種および遺伝子のリストを記述することを目的とした解 析は一定の成果を挙げている.さらに,例えば腸内や口腔内,皮膚などヒトの 共生細菌叢を解析するヒトメタゲノムプロジェクトも欧米を中心として実施さ れており,すでに成果を挙げつつある.  しかしながら,「メタゲノム解析」という名称から,ゲノム解析とほぼ同様 であるとの誤解をしている研究者が多い.確かに今後のバイオサイエンス,地 球科学などにおける最も重要な基盤を形成するという意味では,ヒトおよび微 生物を含む各生物種のゲノム計画と同様であるが,メタゲノム解析はこれまで のゲノム解析とは概念から大きく異なっている.  では,ゲノム解析とメタゲノム解析は一体何が違うのか?本講演では,ゲノ ム解析からメタゲノム解析へのパラダイムシフトを話題の中心にして,現在取 り組んでいるメタゲノム研究を例に挙げ,メタゲノム解析におけるバイオイン フォマティクスに関して論じる.