第25回生態適応セミナー

 

 

牧野能士 (東北大学・生態適応GCOE助教)

石田聖二 (東北大学・国際高等教育研究機構/生態適応GCOE助教)

 
     
 
生物多様性の理解に向けた進化学的アプローチ
 
     
 

日時 10月14日(水)16:00-18:00

 
  場所 青葉山キャンパス 生物地学共通講義室  

講師:牧野能士(生態適応GCOE助教)

「多細胞生物における遺伝子重複と遺伝子必須性の複雑な関係」

酵母や線虫では重複遺伝子の機能は重なっており、重複遺伝子ペアの一つをゲ ノム上から欠失させても致死となりにくい。つまり重複遺伝子は非重複遺伝子よ りも遺伝子必須性が低いといえる。一方、マウスの重複遺伝子は非重複遺伝子と 同様に高い必須性を持つとの報告がなされている。 本研究ではマウスとショウジョウバエの遺伝子必須性を詳細に調査し、全ゲノ ム重複により生じた遺伝子や発生関連遺伝子は高い必須性を持ち、これらに属さ ない重複遺伝子は酵母や線虫と同様に低い必須性を持つことを見出した。また、 上記の高い必須性をもつ重複遺伝子が表現型データセット中に偏っていることを 明らかにし、このことがマウス重複遺伝子全体の高い必須性を生み出していると 推察した。全ゲノム重複により生じた遺伝子や発生関連遺伝子が高い遺伝子必須 性を持つ理由について遺伝子量均衡の観点から考察を行う

講師:石田聖二(生態適応GCOE連携助教)

「氷河期サイクルがミジンコの多様性に与えた影響」

約10万年周期で起こる氷河期サイクルは北半球の生物相を劇的に変動させてき た。しかしながら、この劇的な気候変動が北半球の生物多様性や進化におよぼし た影響についてほとんどの分類群で明らかになっていない。北半球全域から採集 した個体の遺伝的特徴を解析すれば、種分布の変遷の歴史をたぐることができ、 氷河期サイクルの生物種への影響を読み解くことができる。いくつかのミジンコ 種(Daphnia galeata, D. rosea s.l.)は北半球の寒帯~温帯域に広く分布してお り、その遺伝的特徴から地域間での個体群の構造と歴史の違いを明らかにした。 日本の個体群は北米のものと比べて遥かに多様な系統群により構成されているこ とが分った。最終氷期、氷床が北米の北半分を覆うことで多くの系統が死滅した のに対して、日本列島では氷河や永久凍土が発達しなかったために多様な系統が 維持されやすかったと考えられる。一連のミジンコの系統地理および系統分類の 知見から、日本列島が氷期の退避地として重要な拠点の一つであることを示す。