第29回生態適応セミナー  
山崎誠和博士(生態適応GCOEフェロー)

加藤広海博士(生態適応GCOEフェロー)
     
  環境ストレスに対する適応反応  
     
  日時 11月11日(木)16:00-18:00  
  場所 青葉山キャンパス 生物地学共通講義室  
     
  講師:山崎誠和博士(生態適応GCOEフェロー)

「植物の温度適応:細胞膜タンパク質の凍結耐性における役割」

植物は、光や温度、水などの環境因子の日的・季節的変化を鋭敏に感知すること で成長や生殖の時期を制御し、生活環を循環させる。一方で、環境因子は、示強 性や示量性の物理量であり、強度が高い場合や量が過剰もしくは過少な場合、植 物にとってストレスとなる。ところが、植物は、その様な環境因子から受けるス トレスに対して種々の耐性機構を進化の過程で獲得してきた。温度は植物の生育 に直接的な影響を与える。特に、氷点下では植物体内の水が凍結することで極め て激甚なストレスが植物細胞に加わる。しかし、温帯以北に生育する多くの植物 は凍結に対する高い耐性を示す。植物は年間を通して凍結耐性が高いわけではな く、秋の気温低下を経験した後に凍結耐性を増大させる。この過程は低温馴化と 呼ばれている。低温馴化では、様々な生理的変化が植物細胞でおこる。例えば、 低温馴化では細胞膜を構成するリン脂質の組成変化が起るが、これは凍結脱水に 起因する細胞膜の傷害回避に寄与するとされる。我々は、凍結耐性における細胞 膜の重要性を鑑み、低温馴化過程で量的に変化する細胞膜タンパク質に着目し た。今回のセミナーでは、シロイヌナズナの低温馴化過程で凍結耐性の増大と連 動して細胞膜に蓄積する植物のシナプトタグミン(SYT1)の凍結耐性における役 割について紹介する。

講師:加藤広海博士(生態適応GCOEフェロー)

「汚染物質暴露に対する土壌微生物群集の反応」

微生物は小さくて目に見えない。このことはある環境中に棲息する微生物の種数 とそれら個々の量を推定する際に、極めて大きな問題となる。実のところ、1 g の土壌に含まれる微生物の群集構造を精確に決定することができないのが現状で ある。しかし近年のシークエンス技術の飛躍的な向上や、16S rRNA等の塩基配列 データベースの充実によって、ようやく微生物群集構造の決定に至るスタートラ インに立ったと言えるだろう。 今回のセミナーでは、環境ストレスが与えられた場合の微生物群集の適応反応 を紹介する。微生物の群集構造やその群集が示す生理活性は、気温や水分、栄養 成分の量、あるいは汚染物質の量など、様々な環境因子によって大きく影響を受 けている。ここでは特に土壌が汚染物質に暴露されたケースをもとに、群集構造 解析の方法論や問題点を解説していく。