第30回生態適応セミナー  
花田耕介 博士  (理化学研究所 植物科学研究センター)
     
  二次代謝産物の多様性を生み出すシロイヌナズナの直列重複遺伝子  
     
  日時 11月18日(水)16:00-18:00  
  場所 東北大学理学部生物棟・大会議室  
     
  植物特有の代謝機構によって作ら れる二次代謝産物は、それぞれの植物系統で特異的に合成される化合物が多いことが知られている。これらの化合物は、環境ストレス防御反応、病害生物への防 御反応、花香、花色および受精などの機能に関係していることから、個々の植物種の適応進化に深く関係していると考えられている。二次代謝産物が植物の進化 の過程で頻繁に作り出されているならば、世界中に分布し幅広い環境条件で生き残っているシロイヌナズナのような生物種では、同一種内でも二次代謝産物の多 様性があることが期待される。そこで、世界中の20ヵ所で自生しているシロイヌナズナのエコタイプに着目し、エコタイプ間で、約2000種 類の二次代謝産物の定量を行った。その結果、期待されたように同一種でもエコタイプ間で二次代謝産物の量に多様性があることが明らかとなった。この結果 は、エコタイプ間においても、二次代謝産物の合成に関連する遺伝子には分子レベルの違いが存在することを示唆していた。そこで、これらの二次代謝産物の多 様性とSNP情 報を基に、それぞれの二次代謝産物の増減に強く関わるゲノム領域を推定した。さらに、擬陽性を軽減するため、二次代謝産物の合成に強く関わると予期される ゲノム領域で二次代謝産物と共発現している遺伝子を調べることで、高精度に二次代謝産物の合成に関係する遺伝子を同定する方法を開発した。興味深いこと に、この関連解析で同定された遺伝子の多くが、直列に重複している遺伝子であることが明らかとなった。この結果は、直列重複によって新規に作り出された遺 伝子が二次代謝産物の多様性を生み出していることを示唆していた。最も頻繁に新規の遺伝子を獲得するための突然変異機構の有力な候補が、直列重複と考えら れているためこの結果は理解しやすい結果である。しかし、現在観察される直列重複は遺伝的浮動の結果であるという説も有力であった。今回の結果は、現在観 察される直列重複遺伝子が、適応進化の結果で残っているものが数多くあり、直列重複が急激な環境適応にするための有力な突然変異機構になりうることを支持 する結果となった。