第39回生態適応セミナー

長島 寛 博士
(理化学研究所 発生・再生科学総合研究センター  形態進化研究グループ)
     
  カメの作り方  
  日時 4月27日(火)15:00ー  
  場所 東北大学青葉山生物棟・一階 中会議室  
 

カメの背側の甲羅(背甲)は、隣接する肋骨が癒合してできた骨の板を基盤と しています。そして他の動物の場合とは逆に肩が肋骨(背甲)の内側に位置して おり、この逆転の機構は長いあいだ謎でした。その要因を探るため、スッポンの 発生をニワトリ、マウスのものと比較した結果、実はカメの肩は肋骨の外側にあ ることが分かりました。見かけ上の位置の逆転は、カメの肋骨が他の動物のもの に比べて相対的に短く、発生途中に隣接する肋骨が前後に扇状に広がり、肩に覆 いかぶさって、肩付近が体の内側に折れ込むために引き起こされていました。肋 骨の扇状の配置は甲稜という将来の甲羅の縁の原基によって作られますが、これ はカメ独自の遺伝子ではなく、既存の遺伝子がカメに特有な発現場所を獲得する ことによって形成されます。最近発見された化石中間種Odontochelysの肋骨は短 かく、扇状に広がらず、肩は肋骨の外側に位置していました。この形態は折れ込 みが起こる前の発生段階のスッポン胚に似ています。したがってカメは、 Odontochelysのような動物の後期発生段階に、遺伝子の使い回しによる甲稜形 成、肋骨の扇状拡大と折れ込み過程が付け加わることで進化したと考えられます。

参考文献:

Science. 2009. 325:193-196;Development. 2007. 134:2219-2226;Developmental Dynamics. 2005. 232: 149-161.