第40回生態適応セミナー

岸田治(北海道大学 北方生物圏フィールド科学センター 天塩研究林)
西村欣也(北海道大学・大学院水産科学研究科)
  日時 4月22日(火)16:30ー18:00  
  場所 東北大学青葉山キャンパス総合研究棟 2F 204室  
   
 

1. 両生類幼生をモデルとした表現型可塑性の生態学:個体レベルから個体群・ 群集レベルへ
岸田治(北海道大学 北方生物圏フィールド科学センター 天塩研究林)

環境の違いに応じた個体の形質変化は表現型可塑性と呼ばれる。演者は、エゾ アカガエルのオタマジャクシとエゾサンショウウオの幼生を対象にして、捕食者 -被食者関係のもとで誘導される形態変化の研究を行ってきた。2種は相互作用す る相手によってさまざまに形態を変えるが、そのいくつかは極めて効果的な機能 をもつ。たとえば、サンショウウオ幼生とオタマジャクシの間に密接な捕食者- 被食者関係が成立する場合、両者は対抗的な表現型を発現する。サンショウウオ 幼生はオタマジャクシを丸呑みしやすいように、通常よりも1.5倍近く顎幅を発 達させる。一方、オタマジャクシはサンショウウオ幼生に食われないよう頭胴部 を2〜3倍も膨らませる。表現型可塑性はいろいろな生物種でみられる普遍的な現 象であるが、エゾアカガエルやエゾサンショウウオのように高機能な表現型を誘 導する表現型可塑性の事例はそれほど多くはない。このことは表現型可塑性の生 態学的意義を研究するうえで、2種の幼生が優れたモデルになることを意味す る。現在私は、2種の形態形質を実験的に操作して、表現型可塑性が個体群プロ セスや群集プロセスに及ぼす影響について調べ始めている。本講演では、彼らが 示す可塑性の多様性と適応的機能に焦点を当てたこれまでの研究を紹介したの ち、現在進行中の研究について話題提供させていただく。

2. 捕食危機に対処する可塑的防御形態:発現メカニズムを探る
西村欣也(北海道大学・大学院水産科学研究科) 

エゾアカガエル(Rana pirica)のオタマジャクシは、丸呑みの捕食者であるエ ゾサンショウウオ(Hynobius retardatus)の幼生の捕食危機に曝されたとき、防 御機能として頭胴部を膨満化させる。捕食危機で起こる膨満形態への変化は、個 体の内部で起こる一連のプロセルとして興味深い。膨満化を起こさせる、あるい は膨満化とともに起こっている体内のプロセスについて、組織学的、生理学的知 見の幾つかを報告する。また、サブトラクティブ?ハイブリダイザーションと cDNAマイクロアレイを用いた方法によって、形態変化期間のトランスクリプトー ムパターンから、膨満化とパラレルな挙動を示す遺伝子のスクリーニングを行 い、膨満化関連遺伝子の機能の推論を行ったことについても報告する。