第43回生態適応セミナー (Aセミナー/企画セミナー)

山浦悠一(北海道大学大学院農学研究院)、森章(横浜国立大学環境情報研究院)
 
  景観生態学の視点から迫る森林生態系管理  
     
  日時 7月2日(金曜日)15:30~18:00  
  場所 東北大学片平キャンパス多元物質科学研究所 材料・物性総合研究棟1号館1階会議室  
   
 

1. 広葉樹林の分断化が鳥類に及ぼす影響の緩和―人工林マトリックス管理の提案―
山浦悠一(北海道大学大学院農学研究院)

陸地のほとんどが人類によって改変された現在、土地利用は生物多様性の最も大きな脅威の一つとみなされている。中でも、農地や都市、人工林などによって生物の生息地が消失・隔離する、いわゆる「生息地の分断化」は大きな注目を集めてきた。分断化された景観を優占する農地や都市、人工林などは「マトリックス」と呼ばれ、これまで生物にとっては同質で無価値な場所だと考えられてきた。しかし近年、マトリックスの機能に注目が集まるようになり、残存生息地の維持・拡大よりも、マトリックスの生物の生息地としての質の向上の方が効果的で現実的だという指摘がなされている。 世界的な木材需要の増加を背景に人工林は世界規模で拡大を続けているが、その影響は後世に遺産として継承されるだろう。日本は世界第5位の人工林面積、世界第2位の人工林率を誇る人工林大国である。今回は、マトリックス管理の人工林景観への応用および人工林大国かつ人工林先進国である日本での研究の意義について考えたい。

2. 自然撹乱体制に基づいた生態系管理
森章(横浜国立大学環境情報研究院)

撹乱体制の定量化は,生態系管理において重要な項目のひとつである。陸域の生態系においては,森林は代表的な構成要素であるので,遺伝子から生態系に到るまでの様々なレベルにおける生物多様性が,森林生態系には潜在的に内包される。そのため,森林生態系やその高位の地理的スケールにある景観に内在する自然撹乱体制を中心とした,自然本来の動的プロセスを尊重し,生態系の構造や機能を健全に保全することは,多様なレベルにおける生物多様性の包括的な保全に貢献し得るとも考えられている。この応用生態学的観点からも森林の撹乱体制を定性的,定量的に評価し,森林生態系の非平衡性を明らかにすることは重要である。近年,森林生態系は,その構成・構造・機能が絶えず変動し,画一的な定常状態(steady-state)や平衡点(equilibrium)に達することは極めて有り得ない(very unlikely)と考えられるようになった。この森林生態系の“非平衡性(non-equilibriumness)”を司る主要因として,自然撹乱が挙げられる。自然撹乱体制を明らかにすることで,森林生態系の動態がより明らかになってきた。本発表では,いくつかの森林生態系や森林景観を例として,それぞれの地域の気候条件に応じた特有の自然撹乱体制を定量化し尊重することが,生態系管理の上でどのように重要視されているのかについて概説する。