第48回生態適応セミナー (Aセミナー)

     
  日時:10月15日(金曜日)16:20‐18:00  
  場所:理学総合棟 205 第3講義室(青葉山キャンパス)  
     

講師:
馬奈木俊介 先生(環境科学研究科)

     
  生態系サービスと生物多様性の経済学  
     
 

生態系は経済活動に不可欠な天然資源を供給するとともに、人類の生存に不可欠な様々なサービスを提供している。しかしながら、経済規模の拡大や人口増加の結果等から、生物多様性・生態系サービスの損失が現在大きな問題となっており、とりわけ貧困層にとって深刻な影響を及ぼす可能性が予想されている。このような状況下において、持続可能な生態系サービスの利用は持続可能な開発を目指すうえで重要な政策課題であり、そのための手法として、生態系サービスの損失および持続的な生態系サービス利用に関する経済的分析が大きな注目を集めている。

このような経済的手法としてのPES制度やREDD、生物多様性オフセットや生態系サービス取引などを含めた生物多様性を取り巻く新しいメカニズムへの期待は大きい。しかしながら、これらの政策を導入した際に実際にどのような社会経済的および環境的影響が生じるのか、また逆にどのような制度設計ならば持続可能な生態系サービスを実現し得るかという点についての研究は極めて少ないのが現状である。さらに、近年議論が進んでいる排出権取引を模した生物多様性・生態系サービスに関する取引についても一部で語られつつあるが、その賛否を含め、グローバルなレベルにおいての制度設計やその効率性・効果性に関する分析は進んでいない。これら生態系サービスの持続可能な利用に向けた経済分析研究へのニーズは高い。
本研究は、経済的価値の内部化による生態系サービスの持続的利用を目指した政策オプションを提案することを最終目的とし、本目的達成のために以下の2点を主たる研究課題として実施する。すなわち、第一として、生態系サービスの経済的価値を反映させたCGEなどの経済モデルを用い、生態系サービスの持続的利用に関する政策の社会経済への影響を分析する。これにより、定量的影響評価に基づいた生態系サービスの持続的利用に関する効率的・効果的な政策オプションを提案することができる。第二の研究課題は、制度分析や実験経済学を基礎とし、生態系サービスの価値を内部化した手法の検討など、新しいメカニズムを提案することである。生態系サービスのうちとりわけ文化的価値などは個人による価値付けが大きく異なるが、それらを踏まえた上での市場メカニズムの枠組みを分析することで、効率的・効果的な制度による生態系サービスの持続的利用可能性を提案することが可能となる。