第67回生態適応セミナー (Aセミナー)

     
 

日時:3月14日(金曜日)16:30 –

 
  場所:片平キャンパス プロジェクト総合研究棟 講義室104  
     

宮腰昌利 博士(ヴェルツブルグ大学)

     
  細菌におけるsmall RNAによる遺伝子発現制御  
     
 

細菌類は森林や海洋、あるいは生体の腸内など、様々なスケールの環境において機能的な基盤を支える生物である。これら細菌群集の機能メカニズムを詳細に把握するには、個々の細胞の活性を発現制御レベルで理解することが必須であろう。本セミナーでは、small RNAを介した細菌の遺伝子発現制御機構を紹介する。Hfqは多くの細菌に存在するRNA結合タンパク質である。50-250塩基からなるsmall RNAはHfqを介して複数のターゲットmRNAと短くて不完全な塩基対を形成し、主に翻訳阻害およびRNA分解を引き起こす。Hfq依存性small RNAは現在のところ大腸菌やサルモネラなどの腸内細菌では約100種類見つかっており、転写レベルの制御のみでは不可能な、より一層迅速な環境応答と複雑な遺伝子発現ネットワークを実現している。GcvBは最も広く保存されているsmall RNAであり、主にアミノ酸代謝の取り込み、代謝に関与する数多くの遺伝子を制御する。GcvBは転写制御因子GcvA/GcvRを介してグリシンに応答して転写される。一方でGcvBは別のsmall RNA、SroCによって転写後レベルで負に制御されていることを明らかにした。SroCはGcvBのターゲットの一つであるアスパラギン酸/グルタミン酸ABCトランスポーターをコードするgltIJKLオペロンの遺伝子間領域にコードされており、二種類のsmall RNAがフィードバックループを形成するという興味深い制御機構を発見した。SroCによるGcvBの転写後制御の分子メカニズムとアミノ酸代謝全体に与えるインパクトについて解説する。