第69回生態適応セミナー (Bセミナー)

     
 

日時:5月8日(火曜日)16:30 –

 
  場所:片平キャンパス 生命科学研究科本館3F会議室(306)  
     

新谷 政己 博士(理化学研究所 微生物材料開発室)

     
  遺伝子の「運び手」プラスミドの環境細菌集団内における真の宿主域の解明  
     
 

土壌や河川等の自然環境では,多種多様な微生物によって複雑な微生物生態系が形成されている.こうした微生物生態系内では,環境変化等に応じて遺伝子の水平伝播が頻繁に生じ,結果的に生態系全体の適応能力にも大きな影響を及ぼすと考えられている.プラスミドは様々な細菌間を移動可能な遺伝子の「運び手」であり,このような遺伝子の水平伝播を担う主要な遺伝因子である.プラスミドを受け取れる細菌の種類(=宿主域)については,古くより重要な性質として調べられており,細菌の門・網を越えて移動可能な「広宿主域」プラスミドと,同一の属・種細菌間のみを移動可能な「狭宿主域」プラスミドとに大別されてきた.しかしこれらの宿主域は供与菌・受容菌一種類ずつを選択し,培養を介した接合実験によって決定されており,供与菌・受容菌となり得る多様な細菌が存在し,かつ未培養・難培養性の細菌を多数含む自然環境のプラスミドの宿主域を正確に反映していない可能性が高い.本研究では,プラスミドの真の宿主域の解明を目指し,「広宿主域」として知られる不和合性(Inc)P-1群プラスミドと,「狭宿主域」として知られるIncP-7群プラスミドを解析対象として,環境細菌集団全体を受容菌候補とし,プラスミドを受け取った細菌を培養せずに細胞レベルでの検出・分離・解析を行った.現在までに,双方のプラスミドについて,従来知られていなかった細菌を宿主にできる可能性が示された.