第70回生態適応セミナー (Bセミナー)

     
 

日時:5月28日(月曜日)15:00 –

 
  場所:青葉山キャンパス 生物・地学共通講義室  
     

片山 歩美 博士(九州大学 演習林)

     
  ボルネオ島熱帯雨林における土壌呼吸と炭素配分  
     
 

森林の炭素循環、つまり、森林からどのくらいの二酸化炭素が吸収・放出されているかということは、地球上の炭素循環を考えるうえで、必要不可欠な情報である。森林から放出される50-95%もの量を占めるのが、土壌から放出される二酸化炭素(土壌呼吸)である。特に年間を通して気温と降水量に恵まれた熱帯雨林では、土壌呼吸量が非常に大きく、また、空間的な変動が大きいことが報告されているが、熱帯雨林においてその要因を明らかにした研究例は少ない。そこで、本発表では、ボルネオ島熱帯雨林における土壌呼吸の空間変動要因についての研究を紹介する。本試験地では、世界最大級の土壌呼吸量を観測した。また、土壌呼吸速度の空間変動も既存の研究よりも大きいことが明らかとなり、巨大高木の位置と密接な関係があることを発見した。「樹木の位置が土壌呼吸速度に影響を与える」とはどういうことなのか、森林全体の炭素の利用の仕方(炭素配分)という視点から、その意味を考察する。

 
     
     

立木 佑弥 博士(九州大学 システム生命科学府 数理生物学研究室)

     
  樹木豊凶(マスティング)進化に与える実生バンクの役割、有限集団サイズの効果  
     
 

多くの樹木は毎年繁殖を行う訳ではなく、数年に一回の同調した繁殖パターンをみせる(マスティング)。この現象を説明する資源収支モデルによると、一回の繁殖に対する貯蔵資源の投資量が大きいときに間欠的繁殖が引き起こされ、逆に小さいときには毎年繁殖が可能になる。本講演では、樹木の繁殖への資源投資に関わる係数を進化形質とし、アダプティブダイナミクスの枠組みで進化条件の議論を行う。樹木の間欠的な繁殖は、繁殖を行なわない年に子孫を残せない事が大きな不利となるため、この点を補償する何らかのメカニズムが進化条件として必要であると考えられる。そこで実生バンク(幼い樹木の集団)を考慮し、これが間欠的繁殖の進化に貢献する事を示す。実生が耐陰性(光が届かない林床でも長生きする性質)をもって長生きするときには、子孫が長年にわたってギャップ獲得競争に参加するので、間欠的繁殖の不利を補償する。 このモデルにおいて、実生の生存率に対する進化形質の依存性を調べると、実生生存率が小さいときには、毎年繁殖をおこなうが、ある生存率に達すると、毎年繁殖の進化平衡点が消失し、進化の最終状態がマスティングへと離散的に変化することがわかった(進化的ジャンプ)。また、個木ごとの生存、枯死、繁殖を追跡する個体ベースモデルを用いて同様の解析を行ったところ、集団サイズの有限性によって引き起こされる遺伝的浮動(確率性)によって、上記の解析よりも、より小さな実生生存率で、マスティングが進化しうる事がわかった。この結果は進化生態学において、集団の有限性を考慮する事の重要性を示唆している。