第71回生態適応セミナー (Aセミナー)

     
 

日時:6月27日(月曜日)14:00 – 18:20

 
  場所:仙台メディアテーク 7階 スタジオシアター  
     

ドキュメンタリー映画上映

     
  ドキュメンタリー映画「タイガからのメッセージ」  
     
 

世界有数の大河アムール川の上流支流であるビキン川流域には、針葉樹と広葉樹が入り混じる原生の森・タイガが広がっています。アムールトラを頂点とする豊かな生態系を育むこの森が今日まで残されてきたのは、ウデヘをはじめとする先住少数民族が狩猟採集生活を営みながら動物や植物と共生し、大規模な森林伐採から守ってきたからです。  撮影クルーは、2010年春から2011年夏にかけて6回の現地ロケを敢行し、移りゆくタイガの四季の中で、希少なアムールトラをはじめとする動物達の姿、タイガに生きる猟師達や村の人々の生活をカメラに捉えました。彼らとともに森を歩き、川を移動しながら、彼らの生き方や自然観から学ぶべきヒントを探りました。

 
     
     

白岩 孝行 准教授(北海道大学 低温科学研究所/総合地球環境学研究所)

     
  オホーツク海・親潮の巨大魚附林としてのアムール川流域-現状と将来課題  
     
 

 モンゴルに源を持ち、ロシアと中国の国境を流れてオホーツク海に流入するアムール川は、流長4444km、流域面積205万平方kmの大河川である。我々は、この流域に起源を持ち、アムール川によって輸送される溶存鉄こそが、オホーツク海と北部北太平洋親潮域の海洋一次生産に大きく貢献していることを見いだした。  鉄は光合成に必須の微量元素であるが、還元環境以外の水中化では粒子化して沈殿してしまう。このため、海水中の鉄濃度は極めて微量であり、一般に外洋では鉄が欠乏する。冬期に結氷するオホーツク海では、海氷の生成に伴うブイラインの形成により、低温高塩分の水が形成され、いわゆる熱塩循環が発達する。アムール川が輸送する溶存鉄は、この熱塩循環と西岸境界流によってオホーツク海や北太平洋に輸送されている。  アムール川流域では、主として湿原において高濃度の溶存鉄が生成されている。近年の急速な湿原の干拓は、アムール川に流入する溶存鉄を減少させており、一方で、温暖化に伴う海氷生産量の減少は、熱塩循環を弱化することで輸送される溶存鉄フラックスを減少させる可能性がある。これは、結果としてオホーツク海や親潮域の一次生産の減少につながるだろう。  アムール川からオホーツク海に至る海域は、モンゴル・中国・ロシア・日本の国境に位置し、国境を越えた観測活動が必須の地域であるが、これらの国々の政治状況は、必ずしも国際共同研究に好意的とはいえない状況にある。これを克服すべく、我々は研究者による多国間学術ネットワークを立ち上げ、更なる国際共同研究と巨大魚附林の持続可能な利用に向けて歩みだした。