第79回生態適応セミナー (Aセミナー)

     
 

日時:11月26日(月曜日)16:00 –

 
  場所:片平キャンパス プロジェクト総合研究棟 講義室104  
     

黒江美紗子 博士(九州大学)

     
  耕作放棄の景観依存性 ~休耕田がもたらす野生動物個体数への影響~-  
     
 

 日本の農業生態系に広がる水田は、失われた湖沼や湿地の代替生息地として、数多くの水生生物に利用されてきた。特に水場が少ない中山間地での稲作は、例えば森林性の両生類に産卵場所を提供するなど、水田生物だけでなく森林生態系の生物にも正の影響をもたらしていると考えられる。しかし現在、農業人口の低下や集約化が進んだことで、これらの農地のうち約1割が休耕地となり、草地や林へと変化しつつある。このような急激な土地利用変化の影響を明らかにするには、休耕地の増加に伴い、野生生物の農地利用や個体数がどのように変化するかを明らかにする必要があるだろう。  本発表では、水田を利用する代表種として、両生類および水稲害虫イネミズゾウムが、耕作放棄後に出現する草地からどのような影響を受けているかを紹介する。野外観察の結果からは、これらの生物が、1)一時的な餌場や隠れ家として休耕地を利用しているが、2)その利用状況は、周辺にどのような景観要素が存在するかによって大きく左右されること、が明らかとなった。セミナーでは、生物多様性を脅かす第二の危機として注目される、耕作放棄問題について議論したい。