第82回生態適応セミナー (Aセミナー)

     
 

日時:2月8日(金曜日)16:30 –

 
  場所:青葉山キャンパス 生物地学共通講義室  
     

池田 啓 博士(国立科学博物館)

     
  系統地理に始まりどこへ行く? -高山植物における隔離分布の歴史と光受容体を介した適応進化-  
     
 

 遺伝的多様性は生物多様性の基幹を成す要素である。系統地理(Phylogeography)は遺伝的多様性の地理的な広がりを明らかにすることで、種の多様性が生み出される背景に迫る研究アプローチである。本講演では、大きく3つの観点から高山植物の系統地理の研究を紹介する。まず初めに、(1)日本列島の高山植物における気候変動(氷期‐間氷期)と関連した分布形成の歴史に関する研究を挙げる。特に、中部地方の高山植物が持つ独自な遺伝的組成に焦点を当てた話をする。続いて、(2)系統地理の研究から地域適応の遺伝的基盤を探る試みとして、植物の光受容体であるフィトクロム(PHYE)が地域間で自然選択を受けて分化していることを見出した例を挙げる。最後に、(3)周北極地域を中心に北半球の寒帯~高山帯に広く分布する周北極‐高山植物の進化に関する研究を取り上げる。地球上に最も広範囲に分布するこれらの植物の仲間がどのように幅広い環境へと適応しているのかを探る試みの話をしたい。これらの3点の話題を通じて、系統地理が生物多様性の研究に対して与える展開を議論したい。