生物多様性オフセット研究会

 「生物多様性オフセット(Biodiversity offset)」とは,避けられない開発事業により消失する自然生態系や野生生物生息地(ハビタット)の損失に対して,開発事業者の責任で近隣に同等な自然生態系や野生生物生息地を復元,創造,増強,維持管理などすることにより,当該地域全体としてできるだけその損失を緩和しようとする行為のことです.国外では,アメリカを筆頭に,EU諸国やオセアニア諸国で制度化されており,近年ではさらに生物多様性条約締約国会議(CBD)などの国際社会でも議論されるようになっています.また,この生物多様性オフセットが適切に実施されるように,BBOPThe Business and Biodiversity Offsets Programme:企業,金融機関,政府機関,NGO等が連携した,生物多様性オフセットのスタンダードの作成を目的としたプログラム)が作られ,2012年には生物多様性オフセットに関するBBOPスタンダード(The BBOP Standaed for Biodiversity Offsets)が公開されたところです.

 このように,海外や国際社会では生態系の保全のための制度が整いつつありますが,日本にはまだこのような制度はありません.東北大学生態適応グローバルCOE環境機関コンソーシアムは,2010年に “生態適応シンポジウム2010「生物多様性オフセットと生態適応」”を主催し,日本における環境アセスメント制度の現状や,新たにオフセット制度を導入する上での課題,費用,生息地の評価手法について,活発な議論を行いました.その結果,生物多様性オフセット研究会を発足させ,1)BBOPが出版するスタンダードを翻訳する,2)日本に生物多様性オフセットを導入する場合の問題点の検討を行う,という二つのワーキンググループを作り,活動することになりました.

 1)については,BBOPスタンダードの日本語訳を完成し,2012年11月に,日本語版の「生物多様性オフセットに関するBBOPスタンダード」を東北大学生態適応グローバルCOE環境機関コンソーシアムより発行しました.2)については,東北大学の青葉山移転計画において生物多様性オフセットを行ったと仮定して,実際にBBOPスタンダードを満たすオフセットにかかわる作業を行うことによって問題点を洗い出しました.2012年11月,環境機関コンソーシアム主催の“生物多様性オフセット国際シンポジウム「開発と生物多様性保全の在り方を考える」”にて成果発表し,2013年3月,最終的な報告書をとりまとめたところです.

 東北大学生態適応グローバルCOEは2013年3月末をもって終了し,東北大学生態適応センターにその活動が引き継がれました.当研究会も残る問題を解決するため活動を継続していく予定です.

BBOPスタンダード日本語版_完成版

生物多様性オフセット研究会報告書2013



引用・参考
1. 田中章 (2009年).“生物多様性オフセット”制度の諸外国における現状と地球生態系銀行,“アースバンク”の提言.環境アセスメント学会誌,Vol.7,No.2.p. 1-7.
2. 田中章 (2011年).生物多様性オフセット制度化の国際的広がりと今後の課題:CBD COP10での動向を含めて.東京都市大学環境情報学部紀要,第十二号.p. 27-32.
3. BBOP webページ