「生態環境人材育成プログラム」説明会

PEMで学んだことが現場でどのように生かされているか?
(環境省 吉野元)

 私は、環境省自然環境局に所属しています。今年10月に名古屋で開催されたCOP10(生物多様性条約第10回締約国会議)では、生物多様性を取り巻くCOP10関連テーマについて、シンクタンク的な機能として、環境省の立場や見解を打出す土台をつくることで、日本政府を支える役目と思いながら仕事に励んできました。私が関わった主なテーマは「気候変動と生物多様性の関係」「生物多様性の経済価値評価研究(TEEB)」「日本政府によるNGOへの活動資金提供」「ビジネスが生物多様性に与える影響」の4つですが、生態適応GCOEでPEM一期生として学んだ様々なことが、環境省での業務内容に生かされたと思います。

生物多様性を巡る幅広い知見

 まず「気候変動と生物多様性の関係」については、例えば二酸化炭素を吸収する生態系の力をより生かす視点の必要性や、あるいは気候変動そのものより生物多様性保全が重要であることを、私はPEMの「生態系適応科学」の講義や「気候変動シンポジウム」などを通じて当たり前のように認識していました。しかし世界では、未だに二酸化炭素の排出量削減のみ注目されているのが現状です。私はPEMで気候変動の緩和と適応に対する生態系機能の重要性を理解していたので、仕事に強い問題意識をもって取組むことができました。

 次に「生態系サービスの経済的価値評価研究(TEBB)」とは、生物多様性や生態系サービスの経済的な価値を「見える化」するものです。生物多様性の保全に必要な資金が全く足りていない現状を改善するためのツールとしてはインパクトは大きいですが、個人的な見解としては、この数値そのものに正確さや本質的な意味はなく、経済的な価値で捉えられないものを無視するわけにはいかないと考えています。このような考えを持つのに至ったのも、PEMで様々な見方を学んだことが生かされています。さらにTEEBでは、例えば環境経済学や政策など分野横断的な幅広い知識が必要ですが、PEMで専門分野以外の知識が身に付いたと思います。

多様な価値観への理解とコミュニケーション力

 また「日本政府によるNGOへの活動資金提供」とは、生物多様性の高い途上国を対象に、生物多様性保全と地域住民の福利厚生のために活動する現地団体へ資金提供するものです。日本政府としてプロジェクトの報告書の精査や、効率性を高める資金配分などを議論する仕事にも、各プロジェクトにおける環境マネジメントのあり方を考え、意見出しをし、環境省としての見解をつかむ点で、PEMの「環境マネジメント手法」の講義で学んだことが生かされたと思います。

 そして「ビジネスが生物多様性に与える影響」では、研究者・企業・行政・NGOなど多様なセクターが集まるのですが、その中で自分の考えも多少はインプットすることができました。これはPEM講義のグループワークでの経験が生かされていると思います。さらに、情報収集業務で副大臣に随行したGCOB(First Global Busines of Biodiversity Symposium)という国際的な場でも、実践的な英語力に問題はありませんでした。これは、マレーシアへの「国際フィールド実習」、海外調査参加や国際学会発表(特別研修)、国際NGOナチュラル・ステップによるe-learning(ソーシャル・レスポンシビリティ学)などの経験が生かされていると思います。

 つまり、環境省の仕事で求められたのは、専門性を応用・実践する能力はもちろん、生物多様性をめぐる幅広い知見や効率良く仕事をこなす力、さらに多様な価値観への理解やコミュニケーション力といった社会性、そして人間力でした。環境省が求めていた人材は、まさにPEMのような人材だったのです。逆に言えば、PEMを受講したことで、環境省が求める業務をこなせたと思います。

今自分がやるべきこと、挑戦したいこと

 そもそもこの道を選んだ心境の変化としては、研究者を目指していた頃にPEMを受講し、生物多様性を取り巻く社会の現状を知り、このままでは生物多様性がなくなってしまう危機感を覚えたことがきっかけでした。そして、自分の研究と実社会での問題の乖離を感じ、生物多様性の問題は社会の中で取組まなければ意味がない、という気持ちが芽生えました。さらに、PEMを受講する中で、環境人材が社会で活躍できる場が無限に広がっていること、生物学者が社会をリードする時代の到来を実感しました。今では、生物多様性の保全と持続可能な社会を目指すための仕事こそが、今自分がやるべきこと、挑戦したいことだと思っています。

 最後に、PEMを検討中の皆さんへメッセージです。21世紀は環境の時代と言われ、激変する地球環境で自然共生社会に向けて世界が動き始めています。これから大きく変化する社会を見据えて、自分が今後何をしていくべきか、何ができるのかを考え、行動することが必要だと思います。PEMプログラムを受講することで、生物を取り巻く社会を俯瞰でき、自分が何をすべきか方向性も見えてきます。その土台となる知識や経験も得ることができます。ぜひ、PEMをご検討ください。

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