「生態環境人材育成プログラム」説明会

社会人学生としてPEMで学んだこと
(三菱マテリアル 荒井重行)

自分の心に響くものを見つけることが大事

私は埼玉大学理学部で生物学を学び、「重金属濃縮能を持つコケの特性」というテーマで1992年、学位を取得しました。進路を考えていた頃、地球サミットで当時話題となった「持続可能な開発」というキーワードに強く心を惹かれ、将来、地球環境問題に取り組みたいと思うようになりました。そして、鉱山緑化や海外鉱山の環境技術支援も行っているという話を聞き、三菱マテリアル株式会社に就職しました。

 就職前に参加したバリ島マングローブ植樹ボランティアでは、現場に足を踏み入れ、現地学生と一緒に問題を考える経験をしました。これはPEMの「国際フィールド実習」に近い経験だったと思います。またPEMで最初に学ぶ「サステナビリティ概論」では、様々な地球環境問題について理解を深めます。ここで自分が将来何をしたいか、何ができるかを考え、自分の心に響くものを見つけることが大事だと思います。

環境改善を進めていくには、マネジメントの理解が欠かせない

 1992年、入社した三菱マテリアルで最初に配属された中央研究所(当時、大宮)では、鉱山廃水処理技術の開発や、大気・粉塵・悪臭・農薬などの環境測定業務を8年ほど続けていました。そのうち単に環境測定結果を出すだけでなく、結果が悪かった場合、改善するにあたって、経営の立場ならどう判断すべきかを考えるようになりました。そのために環境マネジメントを勉強したいと思い、自ら社外の勉強会に参加し、環境監査に関するNGO組織の立上げなどにも関わりました。

 環境改善を進めていくには、マネジメントの理解が欠かせません。PEMでは、「ソーシャル・レスポンシビリティ学Ⅰ」でマネジメントを学びます。このような活動をしていることは本社にも知られ、関連会社の従業員に対して環境マネジメントの内部監査員養成講座講習会の一部講師役を務めたこともあり、2000年に本社へ転勤になりました。そこでは事業所の環境問題の対応や社内ネットワークを活用した水処理ビジネスの創出というプロジェクトに携わり、この頃中国やアルゼンチンへ出張の機会もありました。

鉱山廃水処理対策と地元の信頼回復のミッションを背負って

 ところが2002年、鉱山廃水処理等をしている関連会社が、排水処理に関する問題を起こしました。私は、水処理の技術支援と、地元への信頼回復を図るための研究所立上げのミッションを背負い、2003年、宮城県栗原市へと転勤となりました。

 そこでは地元で廃校になった小学校校舎を町から借りて研究所に改修し、分析や実験機材を購入し、分析ができる人材の育成にあたりました。そして地元密着型の研究所として情報公開に努めました。環境関係のイベントなどにも出展し、より多くの人に研究内容を紹介しました。技術的には、廃水処理の改善に取組み、鉛の問題に続いて3年後に規制強化される排水中のフッ素の問題の改善にも取り組みました。個人的には、地元の環境NGOや栗原市環境審議会の委員にもなり、地域からの信頼回復に努めました。企業の環境事例や、環境NGOや行政等との関わりについては、PEMの「ソーシャル・レスポンシビリティ学Ⅱ」で学びます。

鉱山緑化や河川環境調査を実施

 廃水処理が一段落した後、鉱山の森林再生に取組みました。細倉鉱山は、岩盤がむき出しになっているため、大雨により急激に水量が増加する問題がありました。そこで森林再生をして保水機能を高めることで、水処理操業の安定化を図ろうと、植樹活動を推進したのです。どのような樹種を選べば良いかアイディアに詰まっていた折、2005年に参加したボルネオ熱帯林植樹ボランティアで宮脇昭先生と出会いました。宮脇先生の提唱する「宮脇方式」は、その土地本来の生態にあった樹種を選び密植・混植する方法です。そして宮脇先生と仕事をする機会を得て、まずは山火事のあった香川県の直島で、続いて細倉鉱山で植樹を行いました。

 次に、河川の環境調査を実施しました。当時鉱山周辺における重金属の生物影響について、外部の機関がさかんに調査し発表していたことから、実態確認をする必要があったためです。まず事業所で説明会や講習会を開き、調査の必要性を説明して、実際に調査を行いました。このような有害物とリスクの関係や、コストをかけて改善する必要があるかといった議論は、PEMの「環境マネジメント手法」で学びます。

新しい分野を切り開くために大学院へ入学

 その後、生物多様性の回復に向けてコストのかからない水質浄化技術を検討すべきと考えましたが、既存の方法がなかったため、2007年、大学院博士課程に入り研究テーマとしました。これまでは過去の経験や既存技術の応用で済んでおり、理論を考えるより行動することを優先してきたのですが、新しい分野を切り開くためには過去の経験だけでは立ち行きません。そこで工学研究科の西村先生と中野先生の指導を仰ぎ、鉱山重金属廃水処理の人工湿地を使った新しい技術開発に取組みました。

 その後、生態適応GCOEとPEMがスタートし、もともと地球環境問題に取組みたい思いがあったため、チャレンジしました。振り返れば、色々な環境問題に取り組みながら環境マネジメントを自分なりに18年間かけて習得してきました。それをPEMでは博士課程3年間のうちにこれらのことを学ぶので(※PEMの講義は博士課程修了できれば最短1年間で履修可能)、6分の1のスピードで学ぶことのできる凄いカリキュラムだと思います。自分は喋りが苦手ですが、海外での学会発表の経験は、外国人と話す度胸をつけることにつながりました。このようにしてPEMを卒業したわけですが、PEM資格取得はゴールではありません。地球環境問題解決へ一歩でも進めたい、さらなる挑戦をしたいと思っています。

熱い心とクールな頭を

 最後に、熱い心とクールな頭を。皆が環境第一と思っているとは限りませんし、環境問題の取組みにも優先順位があります。単に「環境が大事」と主張するだけでなく、そのテーマの定量化できる効果を説明できなければ通用しない時代になっています。また環境問題は、複数分野の連携がなければ、なかなか解決まで進めていけません。さらに、今できなくとも諦めずにチャンスを待つことも大切です。PEMで学んだ者が、それぞれの分野で活躍し、お互い連携を取って行動すれば、より良い未来に変えていく力になると強く思っております。

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